変わらない味と場所、時代に流されない下町の姿「太助寿し」。

和食

浅草と上野を繋ぐアーケードだった「かっぱ橋本通り」。下町情緒に溢れるこの通りに昭和43年、一代目太助さんが創業した「太助寿し」。惜しまれつつも老朽化が原因でアーケードが無くなり、それと同時に閉じてしまったお店は数多い。様々な時代の変化の中で屈強にこの街と共に生き、この街を強く守ってきたこのお店のお寿司へのこだわりは一体、どのようなものなのだろうか。

多くの人々に愛される下町の空間

若女将の景気の良い明るい出迎えに、常連達の活気のある談笑が非常に温かく、どこか心地いい。お店に入ると、そこには近頃あまり見なくなった下町の本来の姿があり、初めて来るのにほっとする気持ちにさせてくれる居心地の良さがあった。

立派な一本杉でできた大きいカウンターに、調理場の上を囲む小さな屋根や綺麗に張られた障子。店内のどこ一つとっても全く抜かりがない。内装は大工さんとこだわりにこだわって作り上げたようで、お店の歴史を物語る重厚感を感じる。

老舗ならではのどっしりとした雰囲気がありながら、いつ来ても心地よく、どこか落ち着く空気感。地元の人や訪日外国人など、どんな人にもこのお店が好かれている理由がここにあるように感じた。

ひたむきに寿司に向き合ってきた職人の技術

次何を握るかお客さんと話しながら寿司を握る大将。和やかに話しながらも、無駄のない繊細な手つきで次々と寿司を握っている。1代目太助さんからお店を継いだ現大将の2代目は、3兄弟の3男坊に生まれた。他の兄弟がみな他に飲食店を経営しており、3男にもお店をやらせたいとのことで太助寿しを継いだそう。その後に8年間の間他のお店で修業を積み、太助寿しに戻って数十年。経験と努力が詰まった熟練の技術で握る様はまさに職人技そのもの。

沢山の人々に好かれ、お腹を満たしてきた鉄火巻き。お店が出来たばかりのころはカリフォルニアロールの様な巻き方であった。海苔が内側に入り、しけって風味が損なわれるということで、2代目が今のスタンダードな巻き方に変えたそう。創業当時からのやり方を変えてまでも、より美味しいものを提供したいという2代目の素直に寿司に向き合う型に囚われない考え方は、とても現代的で柔軟であった。

昔から時代の流れを汲み、柔軟に生きる事を意識し続けていた2代目。今でこそ外国人観光客の多いかっぱ橋だが、昔はここまで来るとは思ってなかったそう。観光客が多くなった今も、英語で十分な対応ができないとのことで、特に外国人向けの看板なども出しておらず、インバウンドは特に気にしていないという。だが、太助寿しにはたくさんの訪日外国人が押し寄せる。ここにはどんな理由があるのだろうか。

今できる限りのおもてなしを

訪日外国人が増え、どこの飲食店も困っているのが「シェア」。一つオーダーした料理を2人以上で分け合って食べるシェアは、飲食店にとっては利益があまり出ないので禁止にしているところが多い。特に個人店など席数の限られたお店は回転率が悪くなってしまうため、あまりよく思わないお店が大半である。

そんな中、せっかく日本に訪れたからにはたくさんの料理を堪能して欲しいと、太助寿しは1000円のランチでもシェアを受け入れ、おもてなしとしてコースターの裏にメッセージまで手書きで書いて渡しているという。お店に来てくれるのも喜んでくれるのも嬉しいし、せっかく日本に来たからには色んなものを食べて、とにかく楽しく帰って欲しいので、今できる限りの対応をしているという若女将。

常連さん、観光客限らずお店に来てくれたお客様に楽しんで帰ってもらえるよう、今できる限りもてなすこの心意気が、観光客、常連さん、さらには若年層の方の心をも掴んでいるのだろう。日本の古き良きを長く、若い世代や海外に伝えていく秘訣がここにあるように思えた。

お店のこだわりが詰まった至極のにぎり

こだわりや創業当時のことなど話を聞いている間に、2代目がちゃっちゃっと手際よく握っていき、あっという間に一人前が運ばれてきた。どのネタも肉厚で大ぶり。贅沢感のあるにぎりを前にどんどんと食欲が湧き出てくる。

まずは白身を一口。綺麗に丸く収まっていたシャリは食べ進めていくたび、ほろほろっとほどけ、身と酢飯の鼻に抜ける豊かな風味と食感が混ざり合っていく。この風味、味、食感が繊細に混ざり合っていく過程が幸福感を増加させていく。2代目の経験と努力で培ったにぎりはさすがとしか言いようのない、繊細で絶妙なバランスを生んでいる。

特に、この艶やかなマグロはすべて天然物を使用しているため、養殖にはない身のギュッと詰まったプリッとした食感、濃縮されたマグロ本来の旨味を味わうことが出来る。普段食べているものとは比べ物にならない、食感と旨味に驚かされる。

時代の流れを汲みながらも流されず、軸はぶれずにしっかりと美味しいものを提供し、出来る事だけを重ねていく。若女将は、訪日外国人が増えても、コロナがあっても何があっても変わらない味、場所があることが大切だと言った。

素直に寿司に向かう気持ちと、いつ来てもほっとできる場所を提供しようという創業当時からの心意気は変わらない。その心意気を伝承していく太助寿しは、常にアップデートしていく下町の形を見せてくれた。

太助寿し
住所  :東京都台東区松が谷2-26-6
営業時間: 11:30~22:30(L.O.22:00)
定休日 : 水曜日
電話番号: 03-3841-4811

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