アプローチし続ける佃煮の“多様性”「湯葢」

食料品

2017年12月、かつて上野とかっぱ橋道具街を繋ぐアーケードになっていたかっぱ橋通りの中心に軒を構えた「湯蓋」。昔ながらと新しさが混在するこの通りで、ふと目に飛び込んできた暖かな和の雰囲気を醸し出すこの店構えに思わず目を奪われてしまう。昔ながらの佃煮の良さをしっかり受け継ぎ、若い方や外国人の方に対しても様々な角度から佃煮をアプローチしていく、今の時代に合わせて徐々に変化を続けているまったく新しい佃煮屋の形を提示していた。

老舗「鮒金」の味を継ぐ湯葢

一歩店内に入ると、佃煮の甘じょっぱい香りが店中に広がっており、温かい照明や家具、エプロン姿の店員さんがしゃもじで佃煮をよそっているのを見ていると、家で母の夕飯を待っている時の様などこかほっとする気持ちになる。

ここの店主である井上さんは以前、浅草でやっていた老舗佃煮屋の「鮒金」で15年もの間勤めていた。鮒金は昭和2年創業の老舗で、テレビやほかの媒体でも多く取り上げられるほどの浅草では言わずと知れた有名店であった。だが、惜しまれつつも3年ほど前に閉店。同時に離職した井上さんは、悩みに悩んだ結果、色々な人に相談しながらも鮒金閉店と同年の2017年12月に、母方の祖父の名前である「湯葢」と名づけ、このお店をオープンすることに決めた。始めは、通りがかりで湯葢の開店を知った近所の方が主に良く来てくれていたそうで、お店をやっているうちに段々と、近くにあるお寿司屋さんの「太助寿司」をはじめとした近隣のお店や、お客様同士の紹介によるクチコミで以前鮒金でよく佃煮を買われていたお客様であったり、遠くにお住まいの方など、様々なお客様が来てくれるようになったのだという。次第に旅行で訪れたお客様や、おばあちゃん、おじいちゃん、親戚へのお土産として佃煮を買っていくお客様など、お土産や贈り物としての需要も徐々に増えていった。

なぜオープンしてすぐ、それほど沢山のお客様から多くの支持を集めるのか。そこには古き良きを残しつつ、新たなお客様にもアプローチを続ける商品にあった。

素材を生かした深みのある味わい

店内には様々な種類の佃煮がずらっと、しじみや小女子、昔懐かしいイカアラレなど甘しょっぱくこげ茶色に染まった姿で綺麗に並んで陳列している。並んでいる一つ一つが、見ているだけでお腹が鳴ってくるほどにどれも美味しそうなものばかり。まず小女子を一口頬張ると、甘みの強いタレの味が舌に広がり、噛みしめていくたびに魚本来の風味、旨味が広がっていく。魚特有のえぐみは一切ないが、ほんのりとした苦みがあり、魚の良い部分が強く出ている。もちろん白米との相性も良く、食べ進む箸が止まらない。黄でんぶの口に入れた途端ほろほろと解けていくふわっとした食感と、あさりの噛んだ瞬間にじゅわっと出るジューシーな旨味、タレに入った生姜の香りが鼻に抜けていく感覚が心地良い。甘めな味わいになっているため、白米とでもそのままでも美味しくいただける。佃煮を作るにあたって使っている調味料は主に醤油、みりん、砂糖のみで、それぞれ違うメーカーの調味料をブレンドしたり、量を調節したり、煮時間を調節することによって味を決めているそう。佃煮は元々、保存食として食べられていたため、長く保存が効くよう辛め(しょっぱめ)の味付けが主流だった。その辛味のイメージで佃煮に対して苦手意識を持つ若者も多いが、湯葢の佃煮は先述通り、甘めの味わいになっているため驚くほど食べやすい。この味付けは「鮒金」の味を忠実に受け継いでいるのだそうで、お子さんからお年寄りの方まで親しみやすい味わいになっている。

多種多様な佃煮のかたち

様々な佃煮がある中でも一際目を引いたのが、湯葢の中でもかなりの人気商品である、「しそわかめ」と「あさりのアヒージョ」。一見、単品で食卓に置いていたら佃煮屋が出している商品とは思えぬ色味だが、鮮やかな緑色のしそわかめはしそとわかめの香りを生かした爽やかな味わい。あさりのアヒージョは佃煮ではないものの、素材へのこだわりと調味料や調理時間の繊細なバランスが重要になってくる佃煮屋ならではの旨味が引き立つ逸品。どちらも今までの佃煮屋のイメージにはあまりない、まったく新しい商品だが、湯葢ならではのこだわりが強く出た、この店でしか味わうことのできない味わい深い商品である。この佃煮屋のイメージを覆す商品の多様性と食べやすさが、新たな世代を引き込んでいるのだろう。

また、ご飯のお供だけではなく炒め物に佃煮を加えて炒めたりなど、様々な食べ方をしているお客様も増えたそう。普段の料理にプラスをするのに加え、おつまみとしてお酒と一緒にいただく楽しみ方が最近特に増えたという。先程のあさりのアヒージョにしかり、他の佃煮をそのまま日本酒や焼酎と合わせても非常に美味しく頂けるが、特に佃煮とチーズの相性が非常に良く、クリームチーズと和えたりするのも濃厚なチーズのコクとギュッと詰まった佃煮の甘辛い旨味が混ざり合い、ワインと非常にマッチするんだそう。家でお酒を飲むことが多くなった今、おつまみとして佃煮を味わってみるのもまた良いかもしれない。

新たな佃煮の可能性

素材の味を生かした湯葢の佃煮。昔から佃煮に親しみのある方でもあまり食べてこなかった方でも、ぜひその味わいの深さを知ってほしい。沢山ある中からどれにするか迷ったら3食セットでの販売もしているので、気軽に食べ比べることもできる。もちろん白米と合わせるのは非常に美味しいが、食べ方にとらわれず普段の料理のプラスに、お弁当のおかずに、おつまみに、普段の食事に気軽に取り入れることができる佃煮の可能性を新たに見つけてみるのもまた面白いかもしれない。

湯葢
住所  :東京都台東区北上野2-1-1
営業時間: 平日10:00〜18:00 土曜10:00~17:00
定休日 : 日曜日、祝日(連休、臨時休業等お問い合わせください)
電話番号: 03-6231-6817

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