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作ったメニューは約90種類。常に研究を重ねるこの店のこだわりとは。「羽根つき焼きおにぎり専門店&LABAR gao(ガオ)」

和食

日が少しづつ落ちてくる頃、かっぱ橋道具街から入谷方面へ目的もなくフラフラと歩いていた。風が少し肌寒く、散歩には非常に心地が良い。道具街を抜けるとファミリー層の住宅が多く建っており、昔懐かしい定食屋さんがポツポツと軒を連ねている。人通りは比較的多い方ではないが子供の通学路にもなっていて、夕方に通るとふっと懐かしい気分になる素敵な場所だ。そんな気持ちに浸りながら歩を進めていると、お米や醤油を焼いているような温かく香ばしい香りが突然鼻を通る。その香りのもとへ顔を向けると、大きな「GAO」の文字が。羽根つき焼きおにぎりを専門にしているお店なんだそう。

焼きおにぎり専門店でさえも珍しく感じるが、羽根つきとは非常にまれである。お店の正式名称「羽根つき焼きおにぎり専門店&LABAR gao」(以下gao)のLABARとは、LAB(研究所)とBARを合わせた造語。随所から食への探求心を感じるこのお店の“羽根つき焼きおにぎり”とはどの様なものなのだろうか。

“間違い”から生まれた羽根つき焼きおにぎり

羽根つき焼きおにぎり専門店になったきっかけは、オープン1週間前の“間違い”からであった。オーナー含む4名でお店を立ち上げた3年半前、gaoは焼きおにぎり専門店としてオープンする予定だった。特注のプレス機におにぎりを挟んで作っていく際、間違って多い分量のおにぎりを入れてしまった。するとはみ出たお米が薄くプレスされ、おせんべいの様なパリパリの食感に。この羽根に面白さを感じたオーナーはオープンの急遽1週間前、羽根つき焼きおにぎり専門店としてお店をオープンすることに決めた。

店長の落合孝裕氏(以下落合氏)は、良い“間違い”であったと言う。羽根つきというのは他でも聞かないし、テレビなど様々なところで取り上げられているが、普通の焼きおにぎりだったらここまでになっていないと思うと話す。今では周りに勧められたこともあり、商標登録をしている羽根つき焼きおにぎり。ここで間違えたのも非常に幸運であり、オープン一週間前にしてメニューをガラッと変えたオーナーのタフさ、より美味しいものを求める姿勢には驚かされる。

ここのメニューは過去出していたものを含めると約90もの種類がある。メニューのほとんどはオーナーが頭に描き、試作品を試して作ったものだ。一発で思っていた味になることもあるが、そうもいかないことも多い。そんな時は納得がいくまで色々入れてみたり、調味料の分量を少しづつ変えてみたり調整を繰り返す。そのため、試食だけですぐにお腹いっぱいになってしまうと落合氏は笑みをこぼしながら話す。それだけではなく、お客さんや近隣の飲食店にアドバイスをもらうことも非常に多い。今販売している「羽根つきライスたこ焼き」は、もともと人気メニューであった「天使」にソースが合うとの声を拾って作られた商品なんだそう。近隣のお店の方はわざわざメニューを考案して来てくれることも。そんな人と人の近さ、アットホームな雰囲気があるからこそ、意見を出し合える環境があると言う。今販売しているメニューは精鋭たちのみだが、これからもメニューは増え続けていくことだろう。

羽根とおにぎりの不思議な新食感

味はもちろんのこと、羽根つきという珍しさ、加えてメニューが多く、斬新。そんなお店があると聞けば当然メディアが黙ってはいないだろう。実際、同店は多くのテレビ番組で取り上げられている。そんなテレビの効果もあって多くのメニューの中から今一番人気になっているのが「チーズリゾット」だ。チーズリゾットの中に入っている塊のチーズが伸びて味も見た目からも素材を強く感じられると、若い方を中心に支持されている。以前から人気のメニューであったが、テレビではチーズリゾットがフィーチャーされることが多く、一番の人気商品に上り詰めたという。そして、チーズリゾットと同率1位であったメニューが「牡蠣醤油バター&レモン」。そして現在トップ3が白だしベースの紅ショウガ、青のり、天かすが入った「天使」。他のメニューはすべて同率で、お客さんは自分の好みを見つけて楽しんでいるそう。

今回は、その人気トップ3を焼いてもらった。プレス機におにぎりをセットし、豪快に挟み込んでいく。開くと、おにぎりに立派な羽根の形がくっきり。しっかりと抑え込んで焼くこと3回。1回目はまだ緩めだった焼きおにぎりが、3回目にはこんがりと香ばしい香りを醸している。焼いている時のジュージューとした音、変化していく香りを嗅いでいるだけでたちまちお腹が空いてくる。焼き上がり、大きく羽根を広げた焼きおにぎりが3つ目の前に。今すぐ手前の物から齧り付きたい衝動に駆られたが、ぐっと抑える。まずは大人気「チーズリゾット」だ。口の中に広がっていくお米とチーズのパリパリに焼かれた香ばしさ。羽根は思っていたより食感がしっかりしており、パリッとした食感が心地いい。おにぎり部分に到着すると、チーズの旨味がお米の温かさと共に口になだれ込んでくる。優しい味わいが広がっていき、思わず頬を緩めてしまう。胡椒が良いアクセントになっているため、無限に食べられるような気持になってくる。伸ばせば伸ばすほど長くなっていく中に潜んだ塊チーズのこの弾力。凝縮された旨味をもちもちと食べ進めていく。とても幸せな気分だ。イタリアンを取り入れたこの焼きおにぎりは至極の味わいであった。
続いて「牡蠣醤油バター&レモン」。牡蠣醤油にバター、レモン。一つ一つは非常に相性の良さそうなこの商品だが、焼きおにぎりとしてどのような変化を遂げているのか非常に気になるところである。期待に胸を弾ませ、一口食べて驚いた。一見主張の強そうな牡蠣醤油だが、まったく癖がない。魚介特有の旨味、風味はあるが、牡蠣が苦手な人でも美味しく食べられそうな癖のない味わい。焦げた醤油の香ばしさとバターの芳醇な香り。レモンを絞ることで爽やかな香りがプラスされ、さっぱりとした焼きおにぎりになる。
そして他2つと一線を敷くのが、名前からも珍しい「天使」である。見た目はその名の通り天使の様に美しく白い焼きおにぎり。香り高い紅ショウガと青のりの風味がすっと鼻を通る。白だしの旨味と天かすのコクが香りをしっかりと支えているからこそだ。非常にお米とマッチしていて、素材すべての味、香り、旨味が一つ一つバランス良く調和している。ひとつの味わいも逃すことがない。日本人が慣れ親しんだ和の深みを存分に味わうことのできるクラシカルな要素のある焼きおにぎりであった。

希少米「おぼろづき」

おにぎりといったら“お米”だろう。gaoは、原材料はほとんどが国産のもの、調味料は添加物をなるべく含まれないものを使用しているなど、食へのこだわりが非常に強い。その中でも一番のこだわりは何といってもお米。gaoの焼きおにぎりのお米は北海道の希少米「おぼろづき」を使用している。これはオーナーが以前、たまたま入った北海道のジンギスカン屋で使用しているお米なんだそう。あまりの美味しさに何杯もご飯をおかわりし、思わず店長に農家を聞いた。それからというもの、直接農家のもとへ出向いて田植えに立ち会わせてもらったり、精米など美味しく食べられる方法を教わってお店に帰ったという。とにかくお米の美味しさをそのまま味わってもらうため、お米はわざわざ玄米で仕入れて炊く直前に精米している。炊き方もこだわりがあり、東京に戻ってからジンギスカン屋の店長に電話で細かく話を聞いて、試行錯誤のうえ今の炊き方になったそう。希少米なので収穫時期前はヒヤヒヤするそうだが、タイミング的にも今は新米。一番美味しく頂ける時期だ。

国産米の消費を促進しているgao。こだわりはなんと白米だけではない。お酒に関しても、一時期はお米に関わるものしか仕入れないと考えていたほどだ。基本、お酒は入谷にある水上酒店から仕入れる。もともとは水上酒店の旦那さんがgaoによく来てくれたところから始まり、お店に良く来て応援してくれる水上酒店から仕入れようと思ったのだという。今では美味しいお酒がないかちょくちょく連絡して持ってきてもらっているのだそう。面白そうなお酒があればすぐ仕入れてみるというオーナー。品揃えは流動的で、来た時にあるものを出している。今まで仕入れた中でも特に珍しいお酒は「天栄米マカビール」。これはオーナーが飲食とは別の広告の仕事でイベントに行った際に見つけたビールで、福島の天栄村という場所で作られたベジマカというマカを使っている。このマカはペルー以外では作れないと言われていた希少な野菜。20年の研究によって作られた高品質な国産品を作ることに成功し、ビールやカレーなど様々な商品を作っているのだそう。この貴重なマカで作られた天栄米マカビールは飲みやすく、すっきりとした口当たりが特徴で、これを飲みに来る方も居るほどgaoでも一躍人気のメニューになった。だが生産量もまだまだ少なく、gao含め3か所でしか販売していないにも関わらずすぐに品薄になってしまうため、現在は12月まで品切れの状態が続いている。今福島以外で天栄米マカビールが飲めるのはgaoのみ。在庫が復活したら、近隣の方はこぞって在庫を枯らしにgaoへ向かうことだろう。

人と人の繋がり

昼は“ヒルガオ”夜は“ヨルガオ”として時間帯によって顔が変わるgao。違いとしてはお昼が食べたいかお酒が飲みたいかである。昼は単品の販売に加えて、おかず、スープとセットにしたランチもやっており、夜は一変、羽根つき焼きおにぎりを頬張りつつ談笑する酒場へと変貌する。ヒルガオ、ヨルガオの名称の由来は入谷の「朝顔市」から。もともと地域の方々から愛されたいという気持ちのもと地域に馴染みのある名前をつけたと言うが、別の理由も。人と人の繋がりを大切にしているオーナーは、「スガオで来てもらい、エガオで帰す」という事を言っていた。ここに出てくるスガオもエガオも同じく“ガオ”という言葉が入っている。“ヒルガオ”と“ヨルガオ”というのは、昼も夜もお客様をエガオで帰す気持ちの表れであった。言ってしまうとこれは後付けらしいのだが、落合氏は後付けだとしても、素敵な言葉遊びであると話す。

ここでも人の繋がりになりますけど…と落合氏が口を開く。先述の水上酒店の話の様に、お客さんだけではなく他店の飲食店との繋がりも非常に深い。例えば、以前MEET KAPPABASHIでもご紹介した「ぬま田海苔」。焼きおにぎりと海苔の相性は抜群で、「ツナマヨ柚子胡椒」「大葉味噌」など様々なコラボ商品を作っている。以前、かっぱ橋商店街の七夕まつりの時には海苔を使用した限定商品「出汁醤油バター」を、プレス機を持って行きぬま田海苔の店頭で販売したこともあった。ぬま田の旦那さんはgaoに良く遊びに来てくれるそうで、情報があると教えてくれたり色々と声をかけてくれるんだそう。近隣のお店となると、ライバルの様なバチバチとしたイメージを浮かべてしまうが、ぬま田海苔の旦那さんにしかり、ここら辺のお店はそんな感じがしない。むしろ仲間の様な感じがする。メニューで悩めばアドバイスをくれ、積極的にお店同士で商品の話し合いや、意見交換をし合う。時にはお客さんとして遊びに行ったりなど、助け合い、ひたむきに町を思う気持ちが溢れる素敵な関係性があった。

gaoはドラマや映画の撮影現場へケータリングの提供をすることが多々あり、撮影は大体1週間ほど。1週間同じものを食べると飽きてしまうのではないかと、落合氏は焼きおにぎりと一緒に食べるおかずやスープなど他のお店に協力してもらって出しているんだそう。協力してもらったお店に少しでも貢献できればと、ケータリングでお店の情報も公開し、お店で食べてもらう働きかけをしている。ゆくゆくは、冷凍販売している焼きおにぎりにセットで、様々な近隣のお店とのコラボ商品を出していきたいと話す落合氏。忙しい飲食の仕事をすることを実は周りに反対されていた落合氏だが、仕事を始めてみると、人との関係も濃密で、普通に暮らしていたらあまり深く話せないような人とも話すことが出来る。良いこと尽くしだ。周りには沢山の素敵なお店があって、gaoは他のお店を知ってもらうひとつの“拠点”になっていきたいと、町や人を思う真っ直ぐな瞳で語るのであった。

元気を蓄えに

メニューや素材のこだわりだけでなく、人との繋がりも強いgao。スガオで向かい入れ、エガオで帰すという心意気の通り、このお店は人を元気にする力がある。以前、とても暗い顔で来店したお客さんが居た。後々その日の事を聞くと、あの時はとても辛い思いをしていたと言う。しんどかったが、美味しいものを食べたら元気が出たと明るく話していたお客さん。落合氏はそのことが、お店に入って一番嬉しいことであった。落合氏がgaoに参加したのは今年8月。それまでは飲食に携わっていなかったこともあり、妙に強く感じたそう。美味しい食べ物は人を元気にし、このおにぎりにはその力がある。もちろん普通の時も来てもらいたいが、元気が無いときはここの焼きおにぎりを食べて活力を得て欲しいと話す落合氏。特にこれからは温かい食べ物が嬉しい時期だろう。温かな下町の雰囲気に香ばしい香りが広がる店内で、会話を弾ませながら絶品の焼きおにぎりを頬張る。疲れている時、元気が無い時は、そんな幸せを感じに足を運ぶのも良いのではないのだろうか。

羽根つき焼きおにぎり専門店&LABAR gao(ガオ)
住所  :東京都台東区入谷2丁目3−3
営業時間: 11:30~14:00/17:00~24:00
営業日 :毎月2日〜22日のみ営業
電話番号: 03-6887-0435

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